荒川 洋治『乙女入門―ぼくのヒロイン・チェック』廣済堂出版 1993

drawer2005-12-28

p92「線を引く乙女たち」
創作の基本は、ものをつくることにある。一本の線を正しく引く。それがはじまりなのである。創作だなんだというが、人は創作への夢に胸をあつくするだけで、制作というものをおろそかにしている。そこに意識を持たない人はまず創作もゆるんだものになる。一篇の作品を仕上げるときには、創作ではなく制作的な心遣い、神経の張り方が特に必要だ。ものを書くことをめざすひとぐらいは、こういう神経をしっかり持ちたい。
(…)創作はもしかしたら誰にもできるが、制作は安易ではないこと。創作することよりも制作する作業のなかに、たいへん多くを学ぶことがあるということが。